夢の中へ

親の言うことは聞くもんだと、今更ながらに心からそう思う…。

今年の秋は異常気象かなのか、9月だというのに夜になっても暑さが引かない。

我家の親の教育方針として『子供部屋にクーラーは贅沢、扇風機・団扇で十分だ』を、今の時代に

実行している意外と頑固な家庭な為に、異様に暑い今年の夏は、電子レンジの中に居るような部屋で生

活するのが嫌で、あちこちの事件を追いかけて回っていたのだが、学校が始まってしまうとそうもいかない。

おかんと和葉に無理矢理連れ帰られて、蒸し風呂になってしまう部屋で夜を迎えること二週間。

真夏と変らぬタンクトップにトランクス1枚という姿に、窓は完全全開の状態で今夜も就寝は当然。

「近頃日本も物騒だから、寝る時は窓を閉めなさい」

等と言う母の忠告も当然無視。

そんなことを言うのなら、クーラーのひとつも買って欲しいもんだ。

そんなことをブツブツと呟きながらベッドにごろりと横になって、今夜も団扇でパタパタと扇ぎながらぼん

やりと天井を見ていると、部活の疲れが出たのか、いつの間にか寝入ってしまっていた。

 

夢の中で俺は、なにやら袋に詰められ暑苦しい、息苦しい思いをしながら何処かへと運ばれている。

まるで籠にもで入れられて運ばれているのか、ユラユラと揺れ、意外とそれが気持ちいい。

しかしその揺れが次第に大きくなり、自分自身の動きの為に起きているのではなく、気が付き下をみて見

ると、地面がウネウネと歪み、揺れていることに気付く。

俺は立っていることもできずに、揺れる床に倒れ転がる。

すると柱が俺の上に倒れこみ、自由を、動きを奪っていった。

胸が圧迫され、息が出来なくって苦しい。

酸素を求めて口を大きく開けるが、何処からか流れ込んできた水が入り込み口の中をいっぱいにして

しまう。

苦しくて苦しくて暴れると、その水に手を手足を拘束されて動きを封じられてしまった。

「なんで!」

出せないはずの、喋れないはずの口唇でそう呟くと、心に染みるような声が答える。

「俺は怪盗だからな、欲しいものはこうして取りに来るんだ」

その声で平次の意識が一気に覚醒する。

だが、目覚めた後も、俺の目に映ったのは現実ではありえない現実だった。

「やっと目を覚ましたな」

目の前に居る姿をみても信じられずに、俺は言葉を失う。

俺の頭上には怪盗キッド。

そしてここはいったい何処なのかと辺りを見回してしまう。

「自分の部屋も見忘れたのか?」

皮肉混じりに放たれる言葉に安心はしたものの、何故キッドがここに居るのかという疑問にぶつ

かった。

俺はとっさに起き上がろうとして、首しか動かせない事実に今更ながらに気が付いたのだった。

「なんや、これはっ?!」

手は頭上でひとつに括られベットヘッドに繋がれ、腿の上辺りにキッドが俺を跨ぐようにして座って

いた。

「なんのつもりや!なんでお前がここにおるねん!!」

精一杯叫んでみても、主導権はキッドにあることは明白の事実。

それでも、いつもの無鉄砲で勝気な性格がそれを許さないかのごとく、暴れようと必死にもがいてみ

せる。

が、事実は全く変化しなかった。

「いいねぇ、その姿」

「な、なんや?」

キッドの言葉の中に妙に不穏なものを感じる。

「教えておいてやろうか?」

「なんや?」

「男ッてのには狩の本能ってモンが非常に大きい」

「だからなんや?」

「つまりな。暴れて抵抗する獲物に燃えるモンなんだって言う事さ」

その言葉を性根居するかのごとく、シルクハットで隠された瞳に異様な光が燈るのを見てしまった。

「KID!!」

「月から良く見えるように、あんなに大きく窓を開け放って、俺を誘うお前が悪いんだぜ」

そんな自分勝手な台詞を吐き出して、キッドの手がタンクトップ腕の所から入り込み、小さな胸の

突起を立ち上がらせようと動き出す。

「勝手なことぬかすなっ!暑いから空けとっただけやろっ!」

今度は夢ではなく、現実のこの自分の部屋の、自分のベッドの上で自由にならない手足を必死に

動かして暴れてやる。

「誰も誘ってなんかおらへん!」

そんな言葉もキッドのちょっと冷たい口唇に塞がれ、深く熱い口付けで次第に身体全体を蕩かされて

行く。

「あかん…キッ・・・ド」

イロイロな不思議を紡ぎだす器用な指先で、平次の全てがひとつづつ暴かれて行ってしまう。

 

熱い夜に、熱い口付け。

冷め遣らぬ淫らな夏が秋の真摯さを犯している。

「声を出せよ、もっと」

真っ直ぐに打ち込まれた情熱が、身体の心を貫いて暴発する。

思考が停止する。

月が上から降ってくる。

大きく丸い、白い月。

冷たくて、熱い、丸い月。

 

 

2002/10/26脱稿

 

やっとUP!第2作目が上がりました(>_<)
10000HIT!記念企画「自分作品」第2段です(笑)
本当は新ちゃん話しにしようと思っていたんです
が、頭の中に浮かんだのはKID様…。
この間TV放映された映画の影響でしょうか?ほ
ら、私って直ぐに見たもの、聞いたものに影響を
受けるから…(~_~;)

 

 

 

プラウザでお戻りください