優しい気持ち

 

暑い!とにかく暑い!

カレンダーは既に9月も後半。

絵柄だって紅葉になっているというのに、この暑さはなんだろう。

しかも、今いる場所が風通しの良い処ならまだしも、ビルの谷間。

炎天下のアスファルト上。

こんな場所を待ち合わせに選ぶんじゃなかったと、今更ながらに後悔の渦…。

 

朝見た天気予報では今日の気温はそんなに上がらず、いつもよりは涼しいと言っていたのに…。

思わず「お天気お姉さん、うそつきやん」などと恨み言を言ってみたくもなってしまうのは仕方がないこと。

だってその言葉を信じて、昨日まではTシャツでいた処を長袖のシャツに変えてきたのだ。

まったく!

日差しの強さに着ているシャツが汗でベタつく。

気持ちの悪さに風を入れようと、ボタンをいくつか外して合せの前をパタパとする。

腕で額の汗を拭っていると、この暑さとはまるっきり反対の、妙に涼しげな顔をしたヤツが、これまた涼しげなガラスの扉を押し開いて現れた。

まだまだ冷房のガンガン効いた建物の中を歩ってきた感のあるヤツは、汗ひとつかいてはいない。

なんか超むかつく!

「待たせて悪いな。やっぱりなれない場所は歩きづらい」

「10分の遅刻やで、工藤」

思わず汗のかきまくっている顔を、その着ている真っ白なシャツで拭ってやろうかと一瞬考えたのだが、その途端後々の報復攻撃が想像出来てしまい、慌てて振り払う。

しかしそれでも、不機嫌になってしまう顔は隠せない。

そんな俺の顔を見て察したのか、俺の感情にはものすごく敏感な工藤は優しげな声と表情で、

「暑い所で待たせて悪かったな」

そう言いながら、指の腹でそっと俺の頬をスッと撫でる。

「し、しかたないやん。お前、こっち詳しくないんやから。お前の分かるン言う処で待ちあわせせなあかんやろ…」

落ちてくる汗を軽く拭ってくれているだけだというのに、その指先の動きに俺の身体が敏感に反応してしまう。

「く…工藤…」

耳の後ろをスッと撫でられて、ゾクリとしたものが腰から頭の先まで駆け抜けていった一瞬に、思わず目をぎゅっと瞑ってしまう。

人通りの多いこんな場所だというのに…。

深い意味など含まれていない行為だというのに…。

今までに工藤にサレテイル行為の所為で、工藤がちょっと触れただけで、その感触や甘さを思い出してしまい、身体が敏感に反応を返してしまう。

「こんな暑い所に居たら、お前干からびそうだな。涼しい所に移動しよう」

まるで何事も無かったかのような落ち着いた声でそう告げると、指先の感触があっさりと消え、反対にシャツの合せを引っ張られ、ボタンを上までキッチリ止められてしまった。

「俺以外のやつらに、お前の肌を見せなくて良い」

それだけを言うと、さっさと歩き出す。

俺は呆気に取られて思わすその背中を見送ってしまいそうなる。

もしかして、あいつ不機嫌?

なんか怒ってる?

自分のシャツの合せと、工藤の背中を交互に見て考える。

そして今の台詞…?

言葉と示された態度が胸深くに染み込んで、自然に顔がほころんでくる。

「服部!!」

先に行った工藤が振り返って、一緒に来ない俺を呼ぶ。

俺は全色力で駆けて行く。

その声の元に。

笑顔のままに。

 

まだ夏は終わっていない。

 

2002/10/02脱稿

 

やっとUP!出来ました(>_<)
10000HIT!記念企画「自分作品」第1段!
HIT!したのが9月、そして1周年も9月と、とてもキリが良かったのでテーマを「9月」にしてこれからそれぞれのキャラでお送りいたします。
いつまでかかるか、何処まで行くかは体力と忍耐次第かも(笑)