≪真夏の果実≫
(服部平次の勝手なお誕生日記念話)
学生にとっての最大のお楽しみ期間、夏休入って数日後。約2週間の夏のクラブ合宿に突入し、
この真夏の暑い中で3年の先輩達やコーチ、挙句の果てはOB達も加わり散々しごかれまくった平次が、
思い切りへとへとになってやっと帰り着いた家の玄関先。
そこでなにやら奥から聞こえて来るのは、父の陽気な声や騒がしいほどの歌声など。また親父連中が
近所迷惑にも宴会中かよ…と思いながらも腹ペコ状態ももう限界。今なら美味しいものがたんまり有るは
ずと、手早く荷物を置いて長い廊下を早足で歩き、食料に在り付こうと閉ざされたふすまを一気に開け
放つ。
「おうっ!お帰り平ちゃん!」
既に大分出来上がりかけている大量のオヤジたちの野太い声に出迎えられながら、一応は礼儀正しく
挨拶をしつつも、ちゃっかりと食べ物の多く残っている位置に目標を定めて座り込むが、その横にいつも
のメンバーとは全く違った顔を見つけて一瞬慌てる。
「な、なんでお前がここにおるねん!」
思わず大声を上げてしまったその人物は、言わずと知れた(何故か)浸出機没の(平次にとっては超
スケベ野郎!)工藤新一!
「何でって言われてもなぁ。道頓堀を歩いてたら、いきなり補導されたんだよなぁ」
そんなことを言い放ったその顔には、意地悪ッ子的な何かを含んだような笑いが張り付いている。
しかしかなり酔っているのか、いつものその含みのあるような顔とちょっと違い、頬が軽く朱に染まり目が
潤んで、かなり色っぽい感じになっていた。
思いがけずそんな新一を見た平次は、一瞬心臓がドキリとなってしまい、その動揺を知られまいと、
わざと突き放すような物言いをしてしまう。
「そ、そないな事言うて、タダ酒飲めるからやろ?こんなん明るいうちから、なにやっとるんや!」
ハッキリ言って問題点はそんな処ではないと思うのだが、この際場所が警察官僚の家だということや、
飲んでいる連中全てが警察関係の人間であるとか、未成年が平気で混じって飲んだくれているなんて
事は、この酔っ払いの集団の中にあってはまるっきり遠い次元の話しとなっているようだった。
まぁ、服部家の考えとしては、親の目の届く位置でなら未成年の飲酒もOK!てな事になっていて、
平次も中学生になった時には既に、父親からビールや焼酎程度の酒は晩酌として認められていたの
だった。
但し、それでも高い酒は飲ませてもらえなかった。なぜなら、母親曰く。
「良い酒、高い酒が飲みたかったら、自分で税金を払ってからにしなさいね」
との言い分。
それでも今日のように、父親が部下や同僚を連れて来ての酒の席においてはそれも緩和され、
一緒に美味しい日本酒等が飲める事となる。
「いったい、いつから飲んどるんや?」
今までの新一との付き合いから言って、酒に関しては強く、かなりの量をイケルと思っていた平次は、
こんなに出来上がりかけた処を見るのは初めてのことだったのだ。
「そうだなぁ。昼飯食う前にここに引っ張ってこられたからなぁ」
平次にビールを注ぎながら、陽気に受け答えをする新一はかなりハイ状態のようだ。
「もう夕方やん。いったい何時間飲んでんねん…」
ここに居る『底無し沼』な連中と同様に、そんな長時間も飲んでいるとは…あまりの新一の付き合いの
よさに平次は思わず呆れてしまう。
「そんなん固いこと言わんと、まぁ平ちゃんも飲めや」
新一に説教でもしそうな勢いだった平次に、横からも前からも親父攻撃の酒類が進められる。
「あっ、すんません」
差し出されれば嫌とは言えないちょっと酒好きの平次は、新一が注いでくれたビールを咽が渇いて
いた事も有って一気に飲み干してしまうと、再びビールがなみなみと注がれそれも咽の奥に流し込まれ
ていく。
周りから次々の注がれるお酒類を調子良く片付けて行った平次だが、疲れていた身体にはあっとい
う間にアルコールが染み込んで行く。
そしてそれから数時間、やっと宴会はお開きとなった頃にはデロデロ状態に近い親父の群と、平次が
出来上がっていたのだった。
それでも家庭のあるものは(根性で)それぞれの帰路に付き、帰る心配の無い独身者は客間へと
這って行き、既に敷いてもらっていた布団の中へと潜り込んで行った。
「悪いわねぇ、工藤くん。客間、みんな塞がってしもうたんよ。今夜は平次の部屋で寝てくれる?」
足元のふら付いている平次を部屋に運ぼうとしていた新一に、平次の母親はそう伝言をすると、また
パタパタと忙しく小走りに去って行く。
「なんや〜ぁ?おかんが、なんやぁてぇ?」
「なんでもないさ」
「さよかぁ」
酔っている平次はかなりご機嫌な様子で新一のされるがままな状態で、部屋へと連れて行かれる。
「そら、ついたぞ。酔っ払い」
平次の倍以上は飲んでいる新一に言われる台詞では無いはずだが、見た目も状態もよっぽど平次
の方が酔いが回りきっていた。
「俺は酔ってへんもん!」
そう言って無理に離れようと新一を突き飛ばしたのだが、平衡感覚が既にずれている平次は、その
拍子に自分がよろけてベッドへと倒れこんでしまう。それでも、とっさに目の前の新一に手を伸ばして
服を掴み、巻き添えにすることは忘れていなかった。
新一とて完全に素面の状態であれば、とっさに平次を支える事が出来たであろうが、アルコールの
回っている今の状態では無理というものだった。
「あいたぁ〜っ」
柔かなベッドの上の為痛くはないはずなのだが、そんな言葉が平次の口からこぼれ落ちる。そして
改めて正面に目をやると、ドアップの状態の新一が、ニヤリとした顔を平次に向けていた。
「なんだ、酔っ払うとお前って大胆になるんだな」
言われた意味が分からずに新一を見つめていたのだが、その言葉が脳に染み入る頃には、自身の
身体で思い知る羽目に陥っていたのだった。
平次の上に覆い被さる体勢で倒れこんだ所為でたいした苦労も無く、新一は難なく平次を組み敷く
事に成功していた。
そして易々と着ていたポロシャツの裾から片手を差込み、脇腹を掌で優しく撫で上げながら胸の突起
に指先を絡める。
「あんっ…」
とっさに漏れてしまった自分の声の甘さに、平次は思い切り動揺する。
「なんか、いつも以上に敏感になってないか?」
大抵はアルコールの所為で愚鈍になるはずなのだが、平次の身体は反対に過剰なくらい敏感に
なってしまっているようだった。
「そんなん、しら…んっ、あっ!」
首筋に顔を埋め、耳の後ろから耳朶に沿って舌を這わせると、更に平次の息が上がり声が止まらなく
なってしまう。
それでも抵抗するかのように新一の背中に両手を回し、引き離そうと服を掴んで引っ張るのだが、
それは新一のシャツの裾を、ズボンから引き出しただけで終わってしまっていた。
新一の口唇と、掌と、指の動きがあっさりと酔った平次の抵抗を食い破り、甘美な誘惑の世界へと
簡単に引きずり込んでしまっていた。
重なり合った下肢の付け根が明確な意思を持った状態へと変化し、ドクドクとした鼓動を刻みはじ
める。
高まり合った熱が全身を包み、痺れに似た感覚をそこここに生み出してゆく。
「やぁ…んっ!」
堪らない快感が新一の指先や口唇から生み出され、そこから頭の先までを一気に走り抜けてゆく。
「今日。俺が何の為に、お前に会いに来たのか分かってるのか?」
耳元でそっと新一が囁く。
軽く息が掛かるだけで、平次の身体が新一の胸の下で跳ね上がる。
「誕生日プレゼント、渡しに来たんだからな」
新一自身の熱さを知ってしまっている身体が、埋め込まれる快楽と熱とを無意識に求めてしまう。
知らず知らずのうちに腰が揺れ、背中に両腕を回してしがみ付く。
「まだ明日になるまでには、時間はたっぷり有るしな」
新一は苦しそうにしてるGパンのボタンを外しチャックを引き降ろしてやると、既に昂ぶっている平次
自身が勢い良く下着を押し上げる。
そのまま下着の中にその手を這わし軽く握り込むと、規則正しい合宿生活の所為で全く解放させて
いなかったのだろう。たったそれだけの行為で全く我慢が効かずに、あっさりと新一の掌を白い液で濡ら
してしまったのだった。
「あ……」
荒い息のまま、ぼんやりとした視線で新一を見つめながら何かを言おうと口を開くが、そんな平次の
瞳に吸い寄せられるかのようにその口唇を新一は塞いでしまうと、「何も言うな」と言うように激しく舌を
絡めて貪る。
角度を変えながら、何度も、何度も…。
そこから犯してゆくように。
8月の、熱く、永い夜はこれから始まる。
END
ペーパー 夏コミ超Special号(2002/08/09発行)初出 2002/08/11改訂
夏コミ用ペーパーに入れたんですが、途中でペーパーが
切れちゃって、せっかく本を買ってくれた皆さんにお渡し
することが出来ませんでした…。
申し訳ないので、ちょっと書き直してでは有りますが、ここにUP!してみました。お持ちの方は違いを見つけて楽しんで頂けるかと…。
さて、この話しは読んで頂いた如く、本格的なH!に突入する前で終わっております。
そこは、まぁ、ねぇ。イベントで普通に配るんだから、あまり濃いのはどうかと思って…。
なのでご希望があれば、この続きを書こうかなぁと思っていますが、いかがなモンでしょうね?
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