乙女の好奇心
「服部…」
「…」
「頼む…もっと…」
蘭達が買い物に出かけて約一時間。重い荷物を抱えてやっとの思いで新一の家にたどり着き、玄関の鍵が開いていたのを良い事に勝手に上がり込んだが、その足が思わず止まる。
「うまいぞ…そう…」
新一の、くぐもり途切れ途切れの掠れ声。
「工藤…もう、あかん…」
平次の疲れたような声。
『…蘭ちゃん…』
『……和葉ちゃん…』
前々から怪しいと踏んでいた二人は『とうとう一線超えちゃったの?』と、お互いを見つ合いながらコクコクと肯き、持っていた荷物を静かにその場にすべて置くと、再びその足を動かした。
そう、乙女の好奇心から、そっと居間のドアに向かって歩き出したのだった。
一歩、二歩、三歩。
うまい具合に微かにドアが開いている。
これはっ!とばかりにそこから覗き込んでみるが、新一たちにとってはラッキー(なのか?)、蘭たちにとってはアンラッキー。
丁度うまい具合に家具が邪魔になり全てが見渡せない。
『よう、見えんわ…』
『あのサイドボードとツリーが邪魔だったわね』
『そうやね。昨日必死に飾るんやなかったわ』
一昨日が二学期の終業式だったため、平次と和葉は昨日の昼間にこちらにやって来た。
二十四日のクリスマスイブは園子の家でパーティーをやるとの事で、蘭経由で和葉に連絡が行ったのだった。
目いっぱいドレスアップ出来るとなれば、お断りをする女はいない。
駅に付くと、迎えに新一と蘭が居た。そしてそのままデパートなどなど、女性人の買い物に連れまわされる事となった。
更に、客を迎えるには殺風景過ぎると、新一の家に小ぶりながら一メートル五十センチほどの本物の樅ノ木を、園子が持ち込んで来たので尚大変。
飾り付けに大騒ぎとなったのだった。
そして今日はパーティーの前夜祭として、工藤低でちょっと騒ごうとなったのだったが…。
『あそこや、蘭ちゃん』
縦に並んで片目半分ほどの隙間から必死に二人を探す。
ソファーの向こう側に、うつ伏せになっている新一を見つける。
腕を組みその上にちょっと横にした頭を預けて、目を瞑ってはいるが眉間に皺が寄っている。
『うそ〜っ、新一が下ぁ〜?』
『うそやぁ〜、平次が上や〜ッ!』素直な乙女たちは、それぞれの感想を同時に素直に述べる。そして再びお互いに顔を見合わせる。
『ここはひとつ…』
『暖かい目で…』そんなことを思いながら二人は肯くと、一歩一歩と後ろに後退する。
『がんばりやぁ〜平次。工藤新一相手にこのパターンは奇跡や。絶対下や思っとったけど、やれば出来るやん。あんたも男やったわ、うんうん』
和葉はそんなことを考えつつ、拳をぎゅっと握り締めてガッツポーズをとりながら下がって行く。
『…新一。オレ様で自身家なあなたが下なんて…よっぽど服部くんが好きなのね…素直におめでとうって祝福するわ…』
蘭は蘭でそんなことを考えていた。
しかし「性」…いやいや「青少年の禁断の愛!を暖かく見つける」という、蘭と和葉のそんな配慮も、町一番の傍若無人女子高生の女王様にかかればひとたまりも無しとなる。
「な〜にやってんのよ、二人とも!」
『そ、園子!しぃ〜〜〜!』
慌てて園子を止めようとしても、止まるはずは当然無い。
ジタバタな動きをする二人を不思議そうな顔で見つめるが、聞こえて来る新一の悩ましい声に好奇心をあっさりそそられると、有無を言わさず部屋に入り込んだ。
『わぁ〜〜っ!園子ぉぉぉ!!』
超慌てふためいき後を追おうとして、やはり手前で体が止まる。
「何してるのよ〜工藤」
園子の大声にやはりと言う思いがする…。
『あかんでぇ〜平次…』
『ごめん新一、止められなくって、邪魔をしちゃって』
今度もそれぞれに勝手な事を考えながら、祈るような気持ちでそっと居間の中を覗く。
「やっだ〜、じじくさぁ〜」
『えっ?じじ?』
『くさ?』
二人は顔を見合すと、そっと中に入って行く。
そして中で見たものは…。
うつ伏せになって寝ている新一の足の裏の上に壁側を向いて乗り、「ふみふみ」と足裏マッサージをしている平次だった。
「うるせ〜ぞ、園子!これもそれも、昨日のお前らの買い物に突き合わさせられた所為だろうに」
「あら、同じ時間歩いたのは私たちも一緒じゃない。ちょっと鍛え方が足りないんじゃないの?工藤新一とあろう者がさ」
「歩いた距離は一緒でも、持たされた荷物の量はダンチだろうに」
「当然でしょ。高校生で、彼氏以外の男の使い道なんてそんなモンしかないんだから」
「お前なぁ、俺たちを何だと思っていやがるんだぁ?」
終わりの無さそうな新一と園子の会話を正面で見ながら、想像力が豊か過ぎた乙女二人は、乾いた笑いを発していた。
何時の世でも、乙女の想像の扉は異次元世界に常に繋がっているのである。
The End...
2001/11/11 脱稿
クリスマスを前ににしな的で無い(笑)落ち有りの話を
書いてみました。本来はこんな感じのドタバタ(?)もの
が実は好きなんです(^-^)/ まぁ、ありがちな話でしたが…。
H!の濃いのも楽しいけれど、たまにはこんなのもいかがで
しょう?気に入っていただけると嬉しいけど…。
ちょっと早いクリスマスをお楽しみ下さいV(^0^)
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