HALLOWEEN NIGHT
「なんだこれは」
なんと言うのか…とても嫌そうな、呆れたような、そんな顔をしてロイは部屋の中を見つめていた。
「かぼちゃですよ。知らないンすか?」
火のついていな煙草を咥えたまま床に座り込み、大きなオレンジ色のかぼちゃを抱えているハボックは、ナイフ片手になにやら切り込みを入れている最中だった。
「それは見れば判る!俺はなんでこんなに、そのかぼちゃが転がっているんだって事を聞きたいだけだ」
大小様々なかぼちゃがコロコロと、なぜかロイの部屋を占領しているのだった。
「だってもう直ぐ、ハロウィンじゃないですか」
「だから、なんだ」
「ハロウィンにゃぁ、おばけにお菓子にかぼちゃが付きモンでしょうが」
「だからって、なんで俺の部屋でそんなことをしてるんだ」
「ホークアイ中尉の命令ですよ。ひとり10個のおばけかぼちゃ作り」
なんでそんなことをホークアイ中尉が命令するのか判らないロイは、不信な目でハボックを睨む。
「はいはい、正直に言います。正しくは上からの『お願い』らしく、ホークアイ中尉が渋々受けたんス。少しでも軍の印象をよくしようとか言う、姑息な手段のひとつですかね」
きつい台詞をさらりと吐きながらも、ハボックの手が止まる事はない。
「まぁ、そんなケツの穴の小さな軍人の考えに振り回される我ら下っ端は、こうして時間外手当も貰えずに、頑張ってるわけっスけど」
しかしだからと言って、ロイの部屋でこの作業を行っている理由にはなっていないのは事実。
「判った。俺もやる」
ロイは着ていたコートと軍服の上着を脱ぎながら、疲れたような大きなため息を付くとハボックの横に膝を抱えるようにしてしゃがみこんだ。
「あぁ、大丈夫っス。大佐の分もやっときましたんで、あともうコレで終わりますよ」
「そうか…悪かったな」
昨日からの2日に及ぶ長々なと続いた会議がやっと終わり、どっと疲れて司令部の中にある部屋に戻ったロイに対し、ホークアイ中尉は何も言わずに家にさっさと帰れと追い立てた。
そんなに疲れた顔をしているのかとトイレの鏡を見ながら思ったもんだったが、こんなオチが待っていようとは思いもしなかった。
それにしても、なんでロイの部屋にかぼちゃだけでなくハボックまで持ち込んだのか、中尉の底知れない洞察力にほとほと感心してしまう。
たぶん。
中尉には知られてしまっているのだろう。
ハボックとロイの、関係と言うものを。
仕事の時には絶対に表には出していないとしても、感の鋭い人間であれば二人の間に流れるものを敏感に感じとてしまってもおかしくはない。
まぁホークアイ中尉に知られたからといって、ロイ的にはどうと言うことはないのだが…。
時々チクチクと嫌味を言われるか、ハボックが表立って苛められる程度のことだ。
有能で頼りになる副官。
仕事面で言えばハボックの10倍以上に。
そんなことをひとり考えていると、ハボックが不思議そうな顔でロイの顔を覗き込んでいた。
「なに、ひとりで百面相してるんスか?」
今完成したばかりのお化けかぼちゃを手にして。
「いやなに、手先が器用だなと思ってね」
ハボックの手に自分の手を添えて、そのまま上に持ち上げマジマジとギザギザの口と三白眼な目が付いた、いかにもハロウィンの置物に仕上がったかぼちゃを見る。
「…なにも、器用なのはかぼちゃ作りの為ばかりじゃないんスけどね」
手袋を付けていないロイの手は想いの他暖かく、ずっとナイフを握り続けて疲れたハボックの指にスルリと絡みついてきた。
「ほ〜っ。他にも器用な手先を披露する場所があるのか?」
からかいの言葉とは裏腹に、ハボックを見つめる瞳には挑戦的な色が宿り、まるで次の行為への誘いを促しているように感じられた。
「なんなら、実践しましょうか?」
こんな夜はめったにない。
誘いに乗らない訳はない。
お互いに、その瞳の中には欲情という名の本能が宿っているから。
「出来るならな」
「では遠慮なく」
それこそ、ホークアイ中尉が洞察した二人の時間が、今夜も始まる。
見ているのは、幾つものハロウィンの登場人物たちのみ。
The END
何となくロイが誘い受けの雰囲気をかもし出してしまいました、今回。この二人だと、私的には完全合意の関係にしか見えなくって…。
しかも攻め方はヘタレで、受け方の方が強気。私にはとっても珍しいパターンですわ。まぁ、この二人なんでしかたないっちゃぁ、仕方ないですけどね(笑)
さて今回は「HALLOWEEN」をテーマに、ギリギリ1日前にどうにかUP!させましたがいかがでしょう。
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