Trick or treatn 2

 

 

いったん寝てしまうと、何があっても起きない・・・と言うやつがいるが、そんな太い神経がどうしても信じられないと、いつも思ってしまう。

 そう。

 時間は何度時計見ても深夜とよばれる時間で。

 窓の向こうは闇夜に星が瞬いている。

 階下の道路を歩く人の姿などほぼ皆無で。

 それなのに。

 いや、そんな中を・・・。

 派手にドアを叩く音だけが、静かな部屋に響いてくるのだ。

 しかも、自分の部屋のドアをだ。

 セントラルの、自分の家のドアであったなら「うるせ〜!」の一言と、蹴りの1発でもって黙らせた挙句に、外に放置することは間違いはないのだが、ここでは勝手が違う。

 なんせ出張中の身としては数日の滞在に家1件借りることなど出来ず、かと言って独身下級兵士に混じっての宿舎泊まりと言うことも出来ない、佐官の身。

 となれば、後は何処かのホテルで寝泊りするか、友人の家にでも転がり込むか、あとは自腹を切ってアパートでも借りるっきゃないのだった。

 そんなヒューズは、一番手っ取り早いホテル暮らしを選択したのだが・・・こんなに夜中に回り中に迷惑を掛けるようなヤツが訪問しに来ることが分かっていたのなら、迷わず『ロイの部屋に』に転がり込むんだったと珍しく後悔しても後の祭り。

 ドンドンとドアを叩く音に混じって、酔った調子で叫ぶ声には非常に覚えがありすぎるくらいある。

「ホント、ロイのところに転がり込んでりゃぁ、あいつらだってこんな夜中に来るなんてことは思いもつかないよなぁ」

 そんな台詞が零れ落ちる。

 そしてサイドデスクのライトを点けてからその横に置いてあるメガネを手に取ると、いかにも仕方がなさそうにベッドから立ち上がり、騒がしいドアへと向かった。

 このまま無視を続けていれば、両サイドや上への部屋から苦情が出ること必死である。

いやもう、フロントには苦情の嵐が舞い込んでいるかもしれない。

こんなこと程度で、軍の評判(いやいや、もともとかなり落ちてはいるのいるのだが)を、自分が進んで落とすってことはない。

 ヒューズ的には悪いことは人に見つからずに裏で堂々とやるから楽しいのであって、公にやるのバカのやることと、かなり危険な思想を実は持っている。

 しかもこんな些細なことで憲兵などにチクられてもつまらない。

「へいへい、今開けてやるから・・・」

 パジャマにスリッパを引っ掛けただけの姿でドアを開けると、そこにはカボチャのかぶり者、付け鼻に黒ずくめの魔女風の衣装に身を包んだ者、背中に天使の羽と頭の上には輪っかを付けた者に、何故かピンクの派手なドレスを着た者、等々・・・数人のお化けというのか不気味な仮装というのかをした物体達が・・・。

『Trick or treat!』

 そんな掛け声と共にクラッカーと紙ふぶきがヒューズに向かって放ってきた。

「おまえらぁぁぁ・・・」

 やっと得た睡眠を邪魔されて挙句に、オバカなやつ等の騒ぎに巻き込まれては、ヒューズとて怒らぬはずはない。

 しかし、こんな夜中に近所迷惑にも何をやっているんだと怒鳴ってみても、酔っ払いには屁でも無いようで全員に取り囲まれ、半分おもちゃのようになにやら付けまくられてしまった。

『Trick or treat!』

「駄目ですよ、中佐。Trick or treat!といったら、ちゃんとお菓子をくれなくっちゃぁ」

「そうそう、だからこうして悪戯されちゃうんですよ」

「おっ、中佐。狼の耳、似合いますね」

「そうそう」

「しっぽとか、ヒゲとかつけましょうよ」

「それより首に蝶ネクタイだろう、狼なら」

「大佐だって色々くれたのに」

「赤いスカーフは?」

「もうみんなの腹ン中だけどさ」

「それじゃぁ、赤頭巾だろ」

「うきゃきゃきゃきゃ」

「わはははは」

 そんな口々の酔っ払いの戯言の中に聞きずてならない台詞を聞いたヒューズが、声の主をつまみあげる。

「お前ら、ロイのところにも行ったのか?」

『当然ですよ!』

 そいつに聞いたはずが、全員が口をそろえて酔っ払いの真っ赤なか顔で頷く。

「はぁ〜〜〜〜〜っ」

 素面ならば、なにがあってもそんなことはしないでマスタング組プラスアルファの面々であろうが、酒と仮装というオプションがついた事によって、超怖いもの知らずな一団に仕上がったこいつらは、こともあろうにロイの部屋も襲撃したらしい。

 それにしても、よくも無事でこうしているもんだ。

「大佐ったら気前良く、ボトル3本もくれましたよ〜!」

「イェ〜〜〜イ!」

「大佐バンザ〜イ!」

「もう、俺一生大佐に付いて行くもんねっ!」

 各々に盛り上がる一団に、ふとヒューズは更に疑問に思ったことを聞いてみる。

「じゃぁ、ホークアイ中尉の処はどうだったんだ?」

 全員の動きがぴたりと止まった。

 更には、顔色も赤から青へとあっという間に変わっていった。

 まさに、ハロウィンのお化けのように・・・。

 

 

 

 その後。

そのハロウィンの夜、ホークアイ中尉の処で何があったのかを、そのメンバーの口から語られることは一生なかった。

 

 

The END

 

ハロウィンに間に合いました・・・と、言うにはびみょう〜なタイミングです。とりあえず、当日にUP!して・・・。いかん12時過ぎたよ。
でも、まっ、いいか。とりあえずハロウィン話です。本当はヒューハボになるはずでした。それが何故か、ギャグ色に(ーー;) 所詮私はギャグ体質。はぁ〜ぁ。

 

 

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