Rhapsody in BlueU≫

 

 遮光カーテンが引かれた薄暗い部屋の中、熱く荒い息を吐きながら汗ばむ身体を横たえて、苦しげに一条が眠っている。

「やっぱり、まだ熱が高いままだな…」

 B1号に負わされた怪我の痛みを押して、碌に休みもせず未確認を追って病院を出て行ってしまった所為で、昨夜打った抗生物質も痛み止めも、再び役に立たなくなっているようだった。

 更に休日の無いのも同じ状態での連日の激務による軽い過労も、怪我に拍車をかけているのだろう。

 時刻は朝の7時。いつもなら起き出す時刻だが、この状態ではさすがのスーパー刑事も本日は休業の札を掛けてもらうしかないだろう。

 椿はそっと部屋を出ると、受話器を取り上げ病院と本庁に電話を入れた。そして氷枕と濡らしたタオルを持って、再度部屋に戻って来る。

「つば…き?」

 頭を片手で軽く抱え上げその下に氷枕を差し込んでいると、一条が目を覚ましたようだった。だがその視線はどこか虚ろで、酔ったようなトロンとした瞳で見つめていたのだった。

「その熱じゃ今日1日は動けないぞ。まともになるまでとにかく寝てろよ」

 思考もはっきりしないのかボ〜ッと考えているようだったが、しばらくすると自由に動かない身体で必死に起き上がろうとひとりもがく。

「そんな訳に行くか…寝ている場合じゃない」

 しかしどうにかベッドの上に上半身を起こしただけでふらつき、そのまま横に倒れこみそうになった処を、見かねた椿に支えられてやっと座れる状態になった。

「こんなんで出て行ったって、みんなの邪魔になるだけだ。せめて熱が下がるまでは寝ていろ。これは医者としての命令だ。嫌と言うなら病院に強制入院させて、ベッドに紐で括り付けるぞ。それでもいいのか?」

 いつにない椿の強い口調に視線を上げてその顔を覗き見るが、やはり視界がぼんやりとして定まらない。それならと自分を支えている椿を引き離そうと、腕を伸ばして抵抗しようとするが、こちらも全く力が入らず無駄な努力に終わってしまう。

 そこまでする一条の頑固さに、椿は呆れすぎて思わず笑ってしまいそうになる。

 しかし全ての抵抗が全く無駄だと言うことと、自分がどんな状況なのかを渋々ながらもどうにかやっと理解してくれた一条は、椿に凭れかかりながら今日だけのギブアップを小声で宣言した。

「分かった…」

 そのままそっと目を閉じた一条に、静かに椿は継げる。

「今日は俺もここにいるから…」

「あぁ…」

 頬に当たる椿のシャツが、ひんやりと冷たく気持ちが良い。

 カーテンの隙間から朝の日差しが入り込む。

 その向こうには、空けるような青空が広がっていた。

                                              END  

 

夏コミSpecial号(2001/08/12発行)初出

 2001/10/06改訂

 

“Rhapsody in Blue”本編の続編だったりして。ちょっぴり甘えたサンな一条さんが書いてみて〜とか思って心のまま(笑)書いてみたのだった。
 ショートショートだったけど多分男同士・同級生同士の安心感とか、弱い所も見せられるとかそんな所も書いてみたかったのかなぁと、今になって思えるかな?
うはは。
 それにしても「コナン」書きモードの仁科だったら、間違いなくこの後H!に100%突入しただろう…。えぇ、完全に。相手が怪我していようが、熱を出していようがおかまい無しに、ね。

 

 

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