Valentine Kiss??

 

 

「これがまた美味しいんだ。ほれ、食ってみろよ」

 そう言って椿が差し出した、その手の先にあるのはホワイトチョコで苺を包んだ、可愛いチョコレートの欠片。

「北海道まで行って買ってきたんだぜ」

 更に恩着せがましく、そんなことも付け加えて言って来る。

「ほれほれ」

 それでも一条は完全無視を決め込んでそのまま書類に目を通していると、その間に手を差し込んできては目の前にチョコレートを突き出される。

「椿…」

 大きくため息を付いて書類を机の上に置き椿に向き直ると、今度はにっこり(あくまでも絶対に裏のあるその笑顔で)微笑みながら、もっと口元近くに移動された。

「ほれ、あ〜んしてみな。あ〜〜〜ん」

 そんな馬鹿げたことを、この年になってまで恥ずかしくてやってられるかとばかりに睨みつけるが、お構いしのこの男は更に口唇に付くくらいにチョコを近づけた。

「お前、ここが何処だか分かっててやっているのか?」

 未確認生命体が出現していないだけで、いつもと変らない本庁の一室。しかし何故か今は不気味なくらいシ〜ンと静まり返っていた。
(誰の所為かは完全に明らかな事実なのだが)

「まぁまぁ良いじゃないの、そんな細かいことまで気にしてたら早く頭が薄くなるぞ。それでなくても、お前の髪質はさらさらで将来が危なそうなに」
「うるさい!! お、俺の髪の心配してる場合か?お前の方がよっぱど危なそうな前髪だろうに。そんなに広いおでこしやがって」
「あ〜っ、お前、俺の一番気にしてること言ったなぁ〜!こうなったら意地でもこのチョコ食べさせるからなぁ!」
「何を言っている。お前が先に言い出したんだろうが。人の所為にするんじゃない」
「うるさ〜ぃ!口移しでも何でもして食わせてやる〜ぅ!!」
「ばか!止めろっ!」

 とっさに立ち上がって逃げの体勢に入ったが、椿もチョコを咥えてそれ以上に素早く立ち上がると、両腕を掴んで捕らえ、ぐっと顔を近づけて行た。

「止めろってばっ!」

 机に仰向けに押し倒されるようなかなり怪しげな体勢で、椿が圧し掛かってくる。

「おごなじぐじでぼ〜」(注:「おとなしくしてろ〜」といっている…)

 ホワイトチョコでコーティングされた丸いチョコレートが眼前に迫る。

「こっのぉっ!」
『ボグっ!』
「いてぇ〜っ!」

 三つの音が同時に起こる。
 最初の怒鳴り声は当然一条。
 三つ目が椿の悲鳴。
 そして二つめは…。
 一条が逃げる為に起こした行動によって起こった擬音。

 そう…逃げるのに必死になった一条は、とっさに自由になっていた片足を上げ、思い切り椿に膝蹴りをかましたのだ。
 その攻撃はいっそ見事なくらいに椿の股間にクリーンヒットした。

 椿の口元から落ちたチョコがコロコロと床を転がり、近くに座ってその光景を固まったまま無言でみているしかなかった桜井の足元までたどり着くと、その動きを止めた。
 直撃を食らった股間を両手で抑えて座り込んだ椿の頭を、一条は更に思い切り叩く。

「こ、今度、こんな処でこんなコトをしたら即座に撃ち殺すからなっ!覚えておけ、椿!!」

 顔を真っ赤に染め、仁王立ちになったまま肩を怒らせて一条はそう言い切ると、視線を床の上の椿から起こす。

「あっ・・・」

 次に視線の合ってしまった哀れな犠牲者は、足元に転がってきたチョコをとっさに拾ってしまった桜井刑事…。
 鋭い視線に捕らえられたまま身動きがとれずにいると、自然と冷や汗が背中を伝い落ちていった。そして次にその視線はそのフロア全体をぐるりと見渡し、その場にいてその光景の一部始終を無言で見てしまった全員に注がれた。

 冷たい空気が一条から流れ出るて、まるでシベリア寒気団さながらにフロア全体を包みこむ。
 そしてそんなブリザード吹き荒れる凍った空気の中、一条と椿以外のその場に居た全員が心の中で考えた事はひとつだったりする。

『今直ぐ、未確認生命体…出ないかぁ…』

 などという、超不謹慎きわまりないことだったのである。

 ある意味未確認より怖い一条の怒り…。

 やはり世界最強(のヒロイン)は…。

The End

 

2002/01/26 脱稿

 

 この話しを思いついたのは、先週兄が北海道に出張したんでそのお土産にもらった苺のフリーズドライの入ったホワイトチョコの所為です。知っている人は当然知ってる有名な「●●亭」で売っているやつです。
 一人でバクバク食べちゃって、おかげで顔にはニキビがぽつぽつと…。いけませんねぇ、この年でニキビ何ぞ作っていては…。(いや、20歳を過ぎたら「フキデモノ」って言うんだよ、っていう突っ込みがそこかしこから聞こえてきます…シクシク)
 
 で、本当は大浴場用の原稿をやっているはずだったのにね。今年初めの新作がこんな軽めなものになっちゃったのは、管理人の頭ん中がコナンモードにまだなっていて、クウガにきちんと切り替わっていない所為です(>_<)こんな感じの軽めなもんで少しリハビリして、春のCityまでには…頑張りますから…(って、大浴場用は春までおあずけか??それは絶対にやばかろう…
ははは  

 

 

プラウザでお戻りください