星に願いを
やっと書き上げた報告書を綺麗に束ねながら、一条は大きくため息に似た息を吐く。
明日は久々の休みが取れる事にはなったのだが、その為にやっておかなければならない報告書を片付けていたら、あっという間に深夜に近い時間になってしまった。
「こうゆうモノは溜めるもんじゃないと、つくづく分かっているんだが…いつの間にか溜まってしまうから始末に終えない」
辺りを見渡せば、人の消えた席が天井のライトに照らし出されていた。
仕事に追われる毎日が嫌なわけではない。しかし思いがけない時にふと、一人であることを実感してしまう時がある。それが「なに」というわけではないが、未確認生命体を追っていたあの1年間は休むことなく突っ走る事だけをしていただけに、こんなホッとした時間を持て余してしまうのかもしれない。
「帰るか…」
立ち上がり、無造作に座っていた椅子の背に掛けられていたコートを着ると、作成完了の書類をポンと課長の『未決済』と書かれた箱に放り込む。
「お先に失礼します」
と、本日の夜勤の同僚に声を掛けて部屋を出た。
階段を降りながら外の寒さを予想して、コートのボタンを嵌めながらこんな時間では居るはずの無い受付のカウンターに目をやると、そこにはこんな文字の入った手作りらしいプレートが置かれていた。
《今夜26:30決行(予定)空を見ろ!!
今世紀最初の俺たちの大天体ショーだッ!!
by獅子座流星群》
一条は笑いながら指で軽くそれを弾く。
「そう言えば、今朝も誰かが言っていたな」
土日祝日など無いに均しい警察家業。今日は普通では日曜日だというのに、署内はごく普通に仕事が回っていた。そんな朝のほんのひと時に茶飲み話程度で出た話題であったが、みんな意外と真剣に「夜中に起きて見るぞ」などと言っていたのを思い出す。
「家のベランダからでも見えるかな」
今の時間なら家に帰り風呂にでも入っていれば、直ぐにその時間になるだろう。そんな事を考えながら玄関の扉を開けて外に1歩を踏み出した。