扉をあけて

 

  何故だか、そこまで来て五代の足が止まる。

  ドアノブに手をかけたのだが、中から漏れてくる会話に身体が固まり、その場に
  凍りつく。

  「だめだよ、椿…」

  苦しげな一条の声に、それでも容赦なく椿が急き立てる。

  「ダメじゃない。ちゃんと飲み込めよ」

  「もう、無理だ…これ以上」

  「俺のが飲めないって言うのか」

  ちょっと拗ねたような椿の声に、一条の戸惑いが覆い被さる。

  「そうじゃなくって…」

  「それならちゃんと口をつけて、そう」

  しばらくの沈黙な後、苦しげな一条の声が響く

  「うんっ…はぁ…」

  「ほら、ちゃんと飲みこんで…溢すなよ」

  一条を促す椿の声は非常に楽しそうだった。

  「もっ…無理だ…」

  「無理じゃない」

  口元を自分で蔽っているのか、一条の声はくぐもっていた。

  「ちゃんと出来ないと、何度でもやらせるぞ。いいのか?」

  「でも、椿…」

  なんとなく涙声にも聴こえる。

  「ほら、やって」

  「椿」

  「自分で出来ないのなら、俺が無理矢理飲ませてやってもいいんだぞ」

  「な…なにを…」

  「ほら」

  ドタバタと暴れているような音がする。

  「止めろ…椿!」

  「なにやってるんですか!椿さん!」

  必死の一条の声に、さすがに外で固まっていた五代だったが、大きな音を立てて 
  思い切りよくドアを開けて、一気に中に飛び込んだ。
  しかしそこで見たものは、健康診断用の検査服に着替え、バリュウムのコップを椿と
  取り合っている一条の姿だった。そしてその周りには数人の看護婦さんの姿も…。

  「あれっ?」

  一瞬の沈黙が部屋の中を通り抜けていった。

  「聞いてくれ五代!こいつは俺に何杯のバリュウムを飲ませたと思う?」

  「へっ?」

  「もうこれで4敗目だぞ4杯目!もうこれ以上飲めるか、こんな不味いもの」

  「何を言ってやがる!おまえが飲むのが下手だからそう言う事態なるんだろうが。
  ほれもう1杯、今度は失敗しないで飲めよ」

  「バリュウム?」

  ドアの外で聞いていた会話は、バリュウムを飲む飲まないの会話だったとは…。
  五代は一気に体の力が抜けてゆく感じがする。

  「ははは…」

  思わず力ない笑いが込み上げて来る。

  その横では相変わらず二人の、声だけを聞くと危ない会話は続いていたのであった。

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2001/11/24 脱稿

 

イベントには新刊が間に合わなかったので、ショートショートを
ここでUP!してみました。コナンの方でもやりましたが、落ち
有りなお話です。やっぱりいいわ、こういうのは。だってて超ノ
リノリでかけますもの。へへへ…。
実はこのパターンでもうひとつあるんで読みたい方だけ下から
行ってください。まじ、同じですからね。
                     

       扉をあけて・パターン2

 

 

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